コトノハ

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File No.1967359
Target:旭 小夏(Asahi Konatsu)
Sex:F
Age:17
Height:158.0
Weight:43.2
blood:no clear

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現在東京都在住
都内の私立高校に通う第2学年
アパートに一人暮らし
父親:B=====者
母親:主婦
兄弟無
父母ともに10年前の=====殲滅戦にて死去

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==保持者(仮)の可能性有










「…(仮)ってなんスか,(仮)って…」
「しかもところどころ斜線が引かれてあって読めないところあるし…ボス,どういうことなの?」

ひととおりウーノとキャンディのコラボレーションに爆笑したノーヴェとディエチ(オットは何故彼らがこんなに笑っているのか分からなかった)にウーノは無言の威圧をふっかけた.あとで尻100叩きの刑後屋敷のトイレ掃除は免れないだろうとやっと後悔した二人は手渡された資料の率直な質問をした.

帰ってきた返事もいたってシンプル.


「あぁ,情報部に急きょ作成を要求した資料なんだ.射線は僕の手書きでね,今の君たちには知る必要はないから消した.それだけだよ.」

メリディオーネファミリー2代目ボスは悪戯に可愛くニコリと笑った.その笑顔を向けられると部下は誰一人として二の句を告げないのである.目に見えない威圧感と踏み入ってはいけないという危機感が瞬間的に体を支配してしまうのだ.この世でそんな笑顔がつくれる10歳児などボス以外に一人としていないだろう.


「知る必要がない…ね.」

そうはつぶやいてみたものの射線でつぶしたくらいではどうにか解読ができるだろう.

あとでお得意のパソコン処理作業でもして割り出すか…とくらいにしかディエチは思っていなかった.おおよそたいした情報でもないだろうとは思うが「知る必要がない」といわれてしまうと人一倍好奇心の大きいディエチの内心はもうわくわくなのである.


「あとは君らの好きにすればいいさ.じゃ,今回のミッションの説明をするね.ウーノ.」
「はっ」


ブンッ…―――

目の前の大きなスクリーンには経歴書に載っていた写真と同じ少女が映し出されていた.まだ子供のように無邪気で,しかしどこか大人びたような雰囲気があり,高校生らしい様子である.

艶のある髪は光に透けるとところどころ綺麗な栗色にひかり,長い髪をひとくくりにポニーテールにして結いあげている.瞳は大きく漆黒.色白で頬はほのかにピンク色をしていた.太すぎず細すぎず,平均的な体格をしたいたって健康な女子高校生であることがうかがえる.

制服姿で友達と登校中だろうか,楽しそうに会話に花をさかせていた.


「彼女が今目を通してもらった娘だよ.旭小夏…今回のターゲットだ.」
「殺しですか.こんな人間がいったいどんな犯罪に手を…」


オットの目が真剣そのものになった.
ディエチは「こんな可愛い子を…」と嘆き,オットとボスを恨めしげに交互に見た.


「ハヤトチリはやめて.今回は…うん,僕たちのミッションとしては初めてかもね.」
「と,いうと?」
「うん,ま逆の事をしてもらおうと思ってる.」
「だから?」

ノーヴェが若干いらついた口調で食いついた.その様子をみてボスはクスクスと楽しげに笑った.

「いわゆる…≪護衛≫,さ.小夏ちゃんを守る=護衛する.意味はわかるね?」
「「「はぁっ!!?」」」
「…ぶふっ…面白い顔!特にオットっ…ぶっ…さいっこ…」


顔面全体がひきつったような顔をしたオットに爆笑するボス.残り二人も似たような顔をしたが中でもオットの顔の奇妙さが一番に際立っていた.

そんな顔をするのも無理はない.3人とも…いや,メリディオーネファミリーTOPの仕事の主たるものは≪殺し≫.それをいきなり正反対の≪護衛≫をしろと言われたのだ.

命を落とすことより守ることの方がはるかに難しいことを殺しのプロである彼らは痛いほど分かっていた.

しかしそんなことに気を配るほどやさしいボスではない.ボスはボスなりにこの状況を十分楽しみ満足しているからだ.わくわくしている,ともいえるだろう.


「オット.わらって!スマイルだよスマイル!そんなことじゃ小夏ちゃんに嫌われちゃうよ?今回一番頑張ってもらわなきゃいけないのはオット,君なんだから.」
「は…は?」

オットは全く現在の状況を飲み込めていないらしい.戦闘以外のことに関しては全くのど素人のオットにとってこのミッションはあまりに難しかった.


「今回の任務は彼女をセッテントゥリオーネの手から守ることだ.理由は…聞かない約束でいこうか.もちろん彼女は一般人だから彼女を含めその周りの人間を巻き込むわけにはいかない.誰にも気づかれず,極秘でこのミッションを遂行してほしいわけ.=ジャッポーネの生活に溶け込んでもらわないといけない.というより小夏ちゃんの生活にね.小夏ちゃんは見ての通り高校生だ.一日の半分以上を学校で過ごしてるわけだから…ほら,もう分かるだろ?オット…君,何歳?」
「はっ.にじゅう…」
「何歳?」
「17です!!」
「正直でよろしい.」

ボスはにこにことほほ笑んだ.オットは背中に今までかいたことのないほどの冷や汗をだらだらとたらしていた.

「し…しかしボス,俺は日本人ですが基本日本で暮らしたことはあまりなく…学校にも通ってない訳で…」
「だから僕が学校に行かしてあげようと思って.」
「いえ,俺は今のこの生活に十分満足して
「君は小さい頃から軍の英才教育を受けぴか一なのはピストルの扱いと人間の命の奪い方だ.そんなことじゃこの世を渡っていけるはずがない…今やマフィアでも社交は必要だ.それに君も17なんだからそれなりの青春も味わってもらいたい!存分に!」
「それいいっすね!!女子高生バンザーイ!!」

日本かぶれのディエチ(日本の電子工業発展にディエチは昔から興味があった)も賛成した事でボスの目は更に輝きを増した.その輝きに比例するように汗の量は増えていくわけだがもはやオットに逃げ道は残されていないらしい.ノーヴェは「協力するからさ.」とぽんっとオットの右肩を叩いた.と同時にオットは肩からうなだれてしまった.


「さっそく情報部に掛け合って転入届を偽装しないとね!1週間後に3人にはジャッポーネに旅立ってもらうよ.持参する武器は武器庫の奴らに直接かけあうといい.僕の名前を使ってくれ.オットたちはそれまでにジャッポーネの予習復習をきちんとしておくこと!いいね.」
「「「…了解」」」
「命は僕が命令するまで絶対に落とすな.八雲,エリザ,ロイ…幸運を祈る.」
「「「はっ」」」


久しぶりにコード名をボスは使わなかった.それだけ彼らを心から心配して,また同じくらい信用している証である.落ち込んでいたオット…いや,八雲も少し元気を出してその場を去った.



コード番号8,相馬八雲(Sohma Yakumo).遅れたが彼がこの物語の主人公の一人である.人の命を奪い続けた彼が一人の少女を守るというなんとも奇妙で難しく長い…長いミッションはまだ始まったばかりだった.




01.mission

e n d.



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